翌日、正太郎は朝一番に清太郎の作業部屋に行く

「お父さん。救霊機は完成した?」

「ああ、出来てるぞ。でも大型の物は最終調整がまだだから使えるとしたらこれしかない」

そう言って清太郎は近くにあった小型の機械を正太郎に渡す

「普通は電気で動くけどここにお守りを入れて使う事もできる。電気の場合は10分程度、お守りだと入っている霊力にもよるが1時間ぐらいは持つんじゃないか?」

「ありがとう、お父さん」

「ところで正太郎、今日の夜には行くのか?」

「一応そのつもりだけど」

「それならみくちゃん連れて行った方が良いぞ。何があるか分からないし」

「でもお姉ちゃんを危険な目に遭わせる訳にはいかないよ」

「正太郎ならそう言うと思ってこれを作った」

清太郎が棚から取り出したのは鉄扇二枚

「コイツは扇部分に電磁波を発生させる事により霊体に打撃を加える事が出来る。唯一の難点は重い事だけど・・・」

そこへみくが現れる

「正太郎おるか〜」

「丁度良いところへ来た。はい、みくちゃん」

「何や、コレ?」

「簡単に言えばこれで幽霊退治が出来る代物だよ」

「ホンマか?」

「ああ、とりあえず外に出てテストしてみよう」

三人は庭に出る

「とりあえずみくちゃんの神楽でも見ようか」

そう言って清太郎は縁側に座る

正太郎もその隣に座る

「コレ持ってすれば良いんやな」

そう言ってみくは神楽を舞った

覚えて間もないのかあまり上手くはなかったが鉄扇を軽々と振り回していた

「アレを軽々と振り回すとは・・・凄いな。色んな意味で」

清太郎は感心していた

「パパさん、コレで良いんか?」

舞い終えたみくは清太郎に言った

「ああ、見事だよ。なぁ、正太郎」

「えっ?うん、上手だね」

「ママさんみたいに舞う事はできないけどな〜」

そう言って鉄扇を見るみく

「まぁ、この家で生まれ育った鈴音ちゃんの様に舞うのはだいぶ時間が掛かるけど基礎さえ出来ていれば大丈夫」

「そんなもんなんか?」

「ああ、それに今見たのは霊的攻撃に対す攻撃や防御が出来るかどうかを見ていたから」

「それは大丈夫なんか?」

「その点に関しては大丈夫だろう。ただ油断はしない事だ」

清太郎は持っていた箱をみくに渡す

「あと普段はコレに入れておくと良い。充電器も兼ねているからちゃんと入れとかないといざという時使い物にならないからな」

「パパさん、ありがとな」

「ま、そう言う訳だから俺はこれから寝るとするわ」

そう言って清太郎は家の中へと入っていった

「あのな、正太郎。昨日一晩考えたんやけどやっぱり一緒に行く」

みくの発言に正太郎は言った

「分かったよ、お姉ちゃん。でも危なくなったら逃げるんだよ」

「分かった」

みくはそう頷いた

 

その夜

「さぁ、勝負や」

トンネルの入り口で構えるみく

「いや、多分ここじゃ出てこないよ」

「そうなんか?」

「うん、相手は多分自爆霊が何らかの形でレギオンになっていると思うから」

「レギオンって何や?」

「元々は一つの霊だったんだけど自分と他人との区別が付かなくなって他の霊を取り込んでいった霊の塊みたいなものだよ」

「そうなんか・・・」

「それが十年も放置されていたとしてここが霊の通る道だったとすればかなり大きなものになっていると思う」

「そんな奴本当に救霊できるんか?」

「大丈夫だよ。その為にお父さんに救霊機作って貰ったし、いざとなったら・・・」

お守りを握りながら正太郎は言った

「お姉ちゃん」

「何や?」

「このお守りはお姉ちゃんを守ってくれると思うから持っていてね」

そう言って正太郎はお守りを首から外しみくに渡した

「でもこれ貰ったら正太郎は守ってくれる物がないんとちゃうか?」

「僕の場合、お守りがない方が良いんだよ」

「それやったら別に良いけど」

みくは渡されたお守りを首に掛ける

「じゃあ、行くよ」

二人はトンネルの奥へと進む

「ここら辺でかな?」

トンネルの真ん中辺りに立ち止まった正太郎は呪符を取り出した

「普通に呼びかけても出てこないと思うからこれで引き寄せるんだよ」

そう言って呪符を地面に置く

「さ、離れて」

正太郎達は呪符より少し離れる

すると呪符の近くに白い靄が掛かってきてその靄から多数の人間の顔が浮かび上がる

「あれがレギオンとかいうヤツなんか?」

「うん。でも・・・」

正太郎がそう言い掛けると向こうの方から話しかけてきた

「ななななにににににかかかよよようううかかかか・・・・」

「最近此処で幽霊達が貴方に取り込まれていると聞いたのですが本当ですか?」

「たたたたたしししししかかかににににににおおおおおれれれれれががががががががややややややっっっっっったたたたた・・・・」

「何故そんな事をしたのです。彼らは成仏する為にこのトンネルを抜けて行くというのに」

そう言うとレギオンは叫び声を上げながら言った

「ざざざざざざびびびびびびじじじしじじじがががっ゛っ゛っ゛っ゛っ゛っ゛っ゛っ゛っ゛だだだだだんんんだだだだ・・・・」

「それならば成仏してみてはどうですか?僕は死んだ事がないので分かりませんがここで漂っているよりは良いと思いますよ」

「どどどどどどぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ずずずずずれ゛れ゛れ゛れ゛れ゛ばばばばば・・・・」

「この光を浴びれば直ぐに成仏出来ます」

正太郎は救霊機を取り出し地面に置きスイッチを入れた

すると救霊機から上に向かって光が放たれる

「さぁ、どうぞ」

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛り゛り゛り゛り゛り゛り゛り゛がががががかどどどどどう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛・・・・」

そう言ってレギオンは救霊機の光を浴び消えていった

「これで終わりなんか?」

「一応はね」

そう言ったあと正太郎は救霊機を持って後に振り向いた

「隠れているのは分かっています。いい加減出てきたらどうですか?」

しかし何も現れる気配がない

「まだ何かおるんか?」

「うん。多分この事件の真犯人だと思う」

「真犯人?犯人はさっきのレギオンとちゃうんかい」

「色々調べたけどどうしてもプールの件とトンネルの件の接点が無いんだよ」

「そうなんか?」

「本来自爆霊である“彼”がプールに現れる訳がない。それとここで霊体を吸収して力を得ていたとしても“彼”の体は小さすぎる」

「じゃあ、犯人は・・・」

「多分プールの件の犯人が“彼”の仕業に見せかける為に力を与えて利用していたんだよ」

正太郎がそう言ったあと正面から声が聞こえてきた

「ご名答。君の言う通りだよ」

声の方を見ると黒い人の形をした物が見えた

正太郎とみくは身構える

だが黒い人の形をした物は一向に動かない

正太郎を先頭に二人は黒い人の形をした方に近づいて行く

「動かない?」

正太郎がそう言った瞬間

「な、なんやコレ。ネバネバする」

みくは何か液状の物に襲われた

「お姉ちゃん!」

正太郎はみくの方を向く

「お前の相手は俺だ」

そう言ってさっきの黒い人の形をした物が襲ってきた

「しまった」

正太郎は持っていた救霊機の電源を入れ照らすがすぐに破壊された

しかし光を照らされた黒い人の形をした物は溶けて消えた

「うまくいった」

正太郎は再び振り返りみくを見る

するとみくはゼリー状の物体の中に取り込まれていた

「お姉ちゃんをどうする気だ」

「どうもこうもない。旨そうなエサがあったから喰うだけだ」

「エサだって?」

「ああ、お前達がトンネルに入ってくる時からこの女が大量の霊力を持っている事が分かってたから隙を見て取り込んだだけの事」

(大量の霊力?もしかしてさっき渡したお守りのせい?)

「それにしても可笑しいな。取り込んだあと直ぐにはその霊力に有り付けたのに今じゃ殆どありゃしない」

正太郎は取り込まれているみくを見る

すると首から提げていたお守りはなくなっていた

(やっぱりお守りのせいだ。僕が渡したばっかりにお姉ちゃんが・・・)

悔いる正太郎

「ま、いい女だからこのまま消化するのもオツだな」

「もう手に入れる霊力が無いんだからお姉ちゃんを解放しろ」

「小僧やる気か?妙な機械ならさっき壊したし今のお前に何が出来る」

「確かに救霊機が壊れた以上僕には何も出来ない」

「・・・それじゃこの女返して貰う替わりにお前が俺にいたぶられるか?霊力も得てパワーアップした事だし無抵抗な人間をいたぶるのは面白い」

正太郎は少し考える

「分かった。その替わりお姉ちゃんを返せ」

「ああ、返してやる・・・お前をいたぶるのに飽きたらな」

ゼリー状の物体は正太郎に対して自分の体の一部を拳に変えて攻撃してきた

「くっ」

正太郎はその拳を避けずにガードして耐える

「ま、ガードぐらいは許してやろう・・・意味があるとは思えないがな」

「ぐはっ」

次の瞬間正太郎の横側からみぞおちに強い衝撃を受けトンネルの壁に叩き付けられる

正太郎はそのまま座り込んでしまう

「人間という物はいかに脆い物か・・・悲しくて仕方がないよ」

そう言って正太郎を摘み上げ全面からサンドバッグみたいに滅多打ちする

「げはっ、ぐはっ」

最後は上に放り投げトンネルの天井に叩き付けた

「かはっ」

そのまま地面に落ちる正太郎

「死んだか?」

少しの間静寂が続く

「ごほっ、ごほっ」

「案外タフだな」

正太郎は這い蹲りながらゼリー状の物体に近づく

「・・・お姉・・・ちゃんを・・・解放・・・」

「ふむ、案外楽しめたからな・・・だがもう遅い、もうじきこの女も死ぬだろうしな」

「!」

「安心しろ、この女が死ぬ前にお前を殺してやる・・・死ね」

ゼリー状の物体は拳を巨大な針に変え正太郎を襲う

次の瞬間、状況は一変する

「居ない・・・何処に行った」

辺りを捜すが誰も居ない

「お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃん」

捜している背後で正太郎はみくの介抱をしていた

「げほっ、げほっ」

「お姉ちゃん、良かった」

正太郎はとりあえずみくを壁際に寝かせる

「ちょっと待っててね。決着付けるから」

そう言って正太郎は向きを変える

「貴様、どうやって・・・」

正太郎はゼリー状の物体の体を指さした

そこには巨大な穴が空いていた

「な・・・」

「この手だけは使いたくなかったんだけど、これ以上抵抗するなら容赦はしないよ」

そう叫んだ正太郎から大量の霊力が放出された

その霊圧に負けたゼリー状の物体は急に態度を変える

「わ、わかったお前達の事は見逃す。だから許してくれ」

「じゃあ、大人しく成仏するんですか?」

「ああ、する」

正太郎は少し眺めていたが向きを変えみくの介抱をする

その時みくの手に握られていた物が目に入った

「これは・・・」

正太郎はそれを手に取る

一方

(このまま成仏してたまるか!いっその事アイツごと飲み込んでしまえ)

そう思い背後から手を伸ばし正太郎を捕獲した

「じ、成仏するんじゃなかったの・・・」

「いや、それよりもお前を喰った方が俺の為になると判断したからここで喰われろ」

そう言って正太郎を締め付ける

「そんなに霊力が欲しいのなら・・・」

正太郎はみくが握っていた物を見せる

「それは俺の核(コア)。何でお前が持っている!」

「お姉ちゃんが握っていたんだ・・・」

「返せ」

ゼリー状の物体はもう一つ手を出して核を奪おうとする

「約束を守れないのに返すつもりはない。自分で成仏しないなら僕が成仏させる」

正太郎は握っていた核に霊力を注ぎ込む

「や、やめろ。そんな大量の霊力を注ぎ込まれたら・・・」

ゼリー状の物体は見る見る膨れ上がり

「もう、だ・・・め・・・だ・・・」

その瞬間ゼリー状の物体は爆発した